「なぜあのひとは泣いているのかな?」とちいさな緑色のとかげが、しっぽをぴんと立ててそばを走りながら、たずねました。
「なぜでしょうね、ほんとうに?」と、日の光を追って、ひらひらと飛びまわっていた蝶が言いました。
「どうしたんでしょうね、ほんとうに?」と、しずかな、低い声で、ひなぎくが隣の花にささやきました。
「赤いばらがほしくて泣いているのよ」ナイチンゲールが答えました。 「赤いばらがほしくてだって!」みんなは叫びました。
「なんてまあばかばかしい!」と小さなとかげが、これはいささか皮肉屋さんなのですが、無遠慮に笑いました。
しかしナイチンゲールは学生の悲しみの秘密がわかっていました、
それで黙ってウバメガシの木にとまったまま、恋の神秘について考えるのでした。

…そこでばらの木は、ナイチンゲールにもっとぴったりと刺を身に押しあてるように叫びました。
「もっとぴったりと押しあてなさいよ、ナイチンゲールさん。さもないとばらができあがらないうちに夜が明けるからね」
そこでナイチンゲールは、いっそうぴったりと刺を胸に押しあてました、すると刺がその心臓に触れ、
はげしい差しこむような痛みが体をつらぬきました。いかにもひどい痛みで、しかもナイチンゲールの歌は、
いよいよもの狂わしくなるばかりでした、
とゆうのは、死によって完成される恋を、墓のなかでも死ぬことのない恋を歌ったからでした。