ぼくの感じでは、思考というのは一つの流れで、放っておきさえすればどちらにむかうとも知れず
勝手に流れ出し、自然に枝分かれして無数の素晴らしい支流を作っていくもので、しかも不思議
なことに、そのどれもが結局は遠くのある一点をめざしているのである。途中で、もし気が向いた
なら、ある考えを一つだけ取り出して、いろいろと引っ繰り返し、ためすがめつ眺めてみるのもい
いだろうし、そいつを頭の中で粘土のようにこねあげてみたくなったとしても一向に構わないのだ
けれども、ではそれを言葉で表しててみようとすると、どうしたって期待外れな結果に終わるこ
とは、ちょうど化学沈殿物の場合と同じだ。溶液の綿状反応が見事であればあるだけ、いざその
結果を顕微鏡のスライドガラスに載せてみると、何とも貧弱な粉状の沈殿物ができているに過ぎ
ないのである。
