私は変にくすぐったい気持がした。「出て行こうかなあ。そうだ出て行こう」 
そして私はすたすた出て行った。
 変にくすぐったい気持ちが街の上の私を微笑ませた。
丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛けて来た
奇怪な悪漢が私で、もう十分後にはあの丸善が
美術の棚を中心として大爆発をするのだったら
どんなに面白いだろう。
 私はこの想像を熱心に追及した。
「そしたらあの気詰まりな丸善も粉葉微塵だろう」
 そして私は活動写真の看板画が
奇体な趣きで街を彩ってる京極を下って行った。

檸檬    梶井基次郎

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