
僕は昔からばかげた事を夢想するのが好きだった。
小さい頃、暖炉の側で、おばあさんが古い曲をバイ
オリンで演奏するのを聞きながらいろいろなことを考
えた。木の霊になりたいとか、蜂蜜に、それも一日だ
け、なってみたいとか、水の上を歩きたいとか、おばあ
さんが弾く、ファの音を見てみたいとか、あまりそういう
ことを人に言うと気がふれていると思われるので努め
て自分の中に収めておいた。
「トラベルエア4000」

仕事の合間ぬって雲を消す練習をしている。客もきょうはまばらだ。ドンは眠ったふりをし
ている。僕が一人でやれるかどうか見届けようとしている。
雲を見ているとどうしても小学校の頃を思い出してしまう。これはさっきドンにしてやった話
だが、ある小学校の授業で先生が質問した。雲は何かの形に似ているでしょう?みなさん
は何の形だと思いますか?
はい象です、キリンです、ビスケットです、雨靴です、おとうさんの
耳、本、シャンデリア、冷蔵庫、鉛筆、孔雀、帽子、その中で、
雲ですやっぱりと言った奴がいた。成績はそいつが常にトップで、
体育がまったくできない男だった。中学三年の時そいつは校舎改築
中のブルドーザーに飛び込み死んでしまった。ドンにそいつは自殺
したのだろうか、と聞いたが、答えてくれなかった。 そのかわりに、
きっとそのかわいそうな少年は雲があらゆるものにみえてしま
って、一つだけ例えば像、なんて言えなっかったんだよ、
この世の全てのものに見えちゃうかわいそうな性格
だったのさ、そう言った。
「 雲 」